天体運動が拠の暦は天文台でつくられている|mammoth 暦特集インタビュー・片山真人さん
「暦」をテーマにしたmammoth “Calendar”特集のショートインタビュー。第1回は、国立天文台天文情報センター暦計算室長の片山真人さんにお話を伺いました。
-天体運動が拠の暦は天文台でつくられている-
農耕で食物を得るには、季節の移り変わりに合わせて種を植えたり収穫したりしなければなりません。このため季節がどのように変化していくかを知る必要が生じ、それが1年=365日という単位になりました。現在ではこの変化の源が地球の公転運動にあることが知られています。地球の自転軸は公転面に垂直ではなく23.4°ほど傾いており、その状態で地球が太陽の周りを公転すると、太陽光線がよく当たる夏や、その逆の冬という季節が生まれるわけです。
季節の大元が天体の運動というわけですから、天文台の出番です。歴史的にも多くの天文台は暦をつくる目的で設置されているんですよ。ただし、暦といってもいわゆるカレンダーのことではなく、太陽や月、惑星がどこにいるかといった基礎データを指します。そして、それまでの観測をもとに、天体の運動理論にもとづいて将来どうなるかを予測します。この予測の部分はとくに重要ですね。その日が過ぎてから「あ、今日は夏至でした!」と言われても困りますから(笑)。
こうした情報は暦要項として官報に掲載しており、これをもとに世の中にたくさん存在するカレンダーがつくられます。一度できた暦は決まりごとにもなりますので、たいがい国レベルの機関が作成しているものです。もちろん、暦には天文学だけではなく、文化・宗教・歴史などの側面もありますので、国や地域によってもさまざまなバラエティが見られます。
片山真人 かたやま・まさと
1971年、新潟県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科卒業後、海上保安庁水路部航法測地課を経て、現在、国立天文台天文情報センター暦計算室長。著書に『暦の科学』などがある。
mammoth No.27「CALENDAR」(2013年9月15日発行)収録